日本の9月は、どこでも同じ「季節」ではありません
気象庁の平年値を見てみると、日本の9月は地域によってまったく異なる表情を見せます。
札幌ではすでに気温が下がり始め、9月半ばには朝の空気がはっきりと涼しく感じられるようになります。
一方、東京や大阪では、まだ暖かく湿度の高い日が続きます。特に東京では、台風の影響もあり、9月は年間でも降水量の多い月のひとつです。
そして那覇では、まだしっかりと夏の気候が続いています。
このように考えると、日本全国の9月を一律に「秋の始まり」と呼ぶことには、少し無理があります。
そして興味深いことに、アーユルヴェーダには、これが不思議ではない理由を説明するための考え方が、もともと備わっています。
古典アーユルヴェーダにおけるKalaとDeshaとは
アーユルヴェーダでは、季節やタイミングについて考える際、常に二つの概念をあわせて捉えます。
それが、Kala(カーラ:時・時間)と、Desha(デーシャ:場所・地域)です。
この二つは、どちらか一方だけでは十分に機能しません。
Kalaは、暦や季節、一年のなかの時期を表します。
一方、Deshaは、地理的な条件、気候、そしてその土地特有の環境を表します。
古典的なアーユルヴェーダの文献でも、季節に関する生活法は、この両方を考慮する必要があることが示されています。
あるKala、そしてあるDeshaに基づいて考えられた生活法が、暦の上では同じ時期であっても、別のDeshaにそのまま当てはまるとは限りません。
つまり、同じ「9月」であっても、暮らしている場所が違えば、身体にとっての季節も異なる可能性があるのです。

Ritucharyaは、そのまま当てはめるのではなく、環境に合わせて考える
Ritucharya(リトゥチャリヤ)とは、アーユルヴェーダにおける季節ごとの生活法を指します。
しかし、この季節のサイクルは、もともとインド亜大陸の気候を基盤として考えられたものです。
アーユルヴェーダでは一年を六つの季節に分けますが、それぞれの季節は特定の気候パターンと結びついています。
そして、それらが日本の気候とそのままきれいに一致するわけではありません。
日本でリトゥチャリヤを取り入れるということは、インドの季節区分や日付をそのまま日本に当てはめることではありません。
大切なのは、その根底にある考え方を理解することです。
一年を通して、暑さ、湿度、風、寒さがどのように変化していくのかを観察し、それに合わせて食事や日々の習慣を調整していくこと。
それこそが、日本の環境に合わせてリトゥチャリヤを実践するということ。
たとえば、那覇の9月であれば、引き続き夏の習慣を意識することが自然かもしれません。
一方で、札幌の9月では、より早い段階から身体を温め、安定させるような生活習慣へ移行していくことが適している場合もあります。
どちらも、リトゥチャリヤの根本的な考え方を、それぞれのDesha(場所・環境)に合わせて実践している、正当なアプローチなのです。
自分の身体に現れる、実践的なサインを観察する
アーユルヴェーダでは、9月を境に、すべてを一斉に切り替えるような考え方をするのではありません。
むしろ、自分自身の身体が発しているサインに目を向けることを大切にします。
たとえば、次のような変化を観察してみてください。
- 食欲に明らかな変化はありますか?以前より食欲が強くなった、弱くなった、あるいは求める食べ物が変わったと感じますか?
- 睡眠は、まだ暑さや湿度の影響を受けていますか?それとも、以前より心地よく眠れるようになりましたか?
- 日中のエネルギーは安定していますか?それとも、真夏のピーク時のように、まだ途中で疲れを感じますか?
- 数週間前までは必要なかった薄手の羽織ものを、朝晩に手に取るようになりましたか?
これらの質問に対する答えの多くが、まだ「夏」の状態を示しているのであれば、暦の上で9月になったからといって、身体がすぐに本格的な季節の移行を必要としているとは限りません。
一方で、いくつかのサインに明らかな変化が現れているのであれば、それは暦の日付以上に、季節の変化を正直に伝えてくれるサインかもしれません。
これから役立つ、ひとつの習慣
9月の間は、季節が切り替わる日を一日だけ決めてしまうのではなく、1~2週間ごとに、先ほどの四つのサインを確認してみることをおすすめします。
年によっては、季節の変化が早く訪れることもあります。
また、年によっては、特に台風の時期が遅い場合など、夏のような気候が9月の後半まで続くこともあります。
これは、暦を完全に無視するということではありません。
大切なのは、日付を季節を判断するための一つの要素として捉えながら、自分自身の身体も同じように大切な情報源として扱うことです。
暦だけを唯一の基準にするのではなく、自分の身体の状態と合わせて考えていきましょう。
9月後半に向けて、この考え方がつながっていくもの
今月、これからご紹介する記事は、すべてこの考え方を出発点としています。
誰もが同じ日に、同じ「秋のリセット」を必要としていると考えるのではなく、それぞれの身体に現れるサイン、それぞれの地域の気候、そして季節の移行を判断するための具体的な方法について見ていきます。
今回ご紹介した考え方を、より具体的な状況に当てはめながら、少しずつ掘り下げていく予定です。
生活習慣を変える前に、まずは自分の身体を観察してみてください。
どこに住んでいても、そこが本当の出発点になります。
まずはドーシャ診断で、ご自身の基本的な体質傾向を知り、9月を過ごすなかで、そのバランスがどのように変化していくかを観察してみてください。