2つのハーブを、深く知る
アーユルヴェーダのヘアケアについて調べていると、アムラ(Amla)とブリンガラージ(Bhringraj)という名前を頻繁に目にします。
けれども、これらのハーブについて、詳しく説明されていることは意外と多くありません。
アムラとブリンガラージは、どちらもアーユルヴェーダのヘアケアにおいて、実際に長い歴史を持つハーブです。
インドでは、何世紀にもわたって使われてきました。
今回このブログでは、この2つを詳しく紹介していきます。
アムラ:インドスグリ
アムラは、小さく酸味のある果実で、植物学的にはPhyllanthus emblica(フィランサスエンブリカ)として知られています。
アーユルヴェーダでは、古くから幅広く使われてきた植物です。
古典文献にも繰り返し登場し、髪のためだけでなく、全身の栄養や滋養に関わるものとしても扱われています。
ヘアケアにおいても、アムラは何世代にもわたる実践の中で、中心的な位置を占めてきました。

アムラの伝統的活用法
アムラオイル
アムラの果実を、ココナッツオイルやセサミオイルなどのベースオイルに浸出させて作ります。
アムラリンス
乾燥または生のアムラを水に浸して成分を抽出し、洗髪後にその水を使います。
アムラパウダー
水やほかのハーブと混ぜてペースト状にし、ヘアマスクとして活用します。
それぞれの使い方には、インド各地で受け継がれてきた、地域や家庭ごとのさまざまな伝統があります。
ブリンガラージ:頭皮にフォーカスしたハーブ
ブリンガラージ(Bhringraj)は、植物学的にはEclipta alba(エクリプタ・アルバ )、英語では「False Daisy」として知られる植物です。
このハーブには、特有の伝統的な位置づけがあります。
アムラがより幅広い目的で使われてきたのに対し、ブリンガラージは主に頭皮そのものとの関わりで知られています。
アーユルヴェーダの古典文献でも、頭皮のケアに用いられるハーブとして、具体的に記されています。
ブリンガラージは、パウダーやリンスよりも、オイルに浸出させて使う方法が一般的です。
ブリンガラージオイルは伝統的にどのように作られる?
生または乾燥させたブリンガラージの葉を、ベースとなるオイルに入れ、弱火でじっくり加熱するのが一般的です。
こうして作られたオイルを頭皮になじませ、通常はしばらく置いてから洗い流します。
伝統的な製法の中には、ブリンガラージとほかのハーブを組み合わせることもあり、アムラを一緒に使うことも多くあります。
この2つを組み合わせることは広く一般的で、現在販売されているヘアオイルでも、アムラとブリンガラージの両方を配合したものが多く見られます。

ヴァータの季節が深まる今、なぜこの2つが大切なのか
前回の記事では、ヴァータの季節について取り上げ、10月になると空気が乾燥し、涼しくなることで、髪にも変化が現れやすくなることをご紹介しました。
乾燥した空気の中では、髪の水分が失われやすくなり、毛先のパサつきや、まとまりにくさ、静電気などを感じることがあります。
特に、もともと乾燥しやすい髪や、夏の紫外線などによって負担がかかっていた髪では、その変化をよりはっきり感じるかもしれません。
こうした季節に、アーユルヴェーダで古くから使われてきたアムラとブリンガラージに目を向けることには、ひとつの理由があります。
それは、この2つがどちらも、伝統的にオイルと組み合わせたヘアケアの中で使われてきたということです。
「乾燥」には、オイルというシンプルな選択
アーユルヴェーダでは、ヴァータを「乾燥」「軽い」「冷たい」「動きやすい」といった性質を持つものとして捉えます。
だからこそ、ヴァータが強まりやすい季節には、その反対の性質を持つものを取り入れるという考え方があります。
オイルは、乾燥とは反対の「油性」や「しっとりとした」性質を持つもの。
そのため、オイルを使った頭皮や髪のケアは、乾燥しやすい季節に取り入れる伝統的な方法のひとつです。
ここで大切なのは、アムラやブリンガラージを「乾燥を治すハーブ」と考えることではありません。
むしろ、乾燥しやすい季節に、どのような方法で髪や頭皮をいたわってきたのかという、アーユルヴェーダのケアの知恵を見ることに意味があります。
アムラとブリンガラージは、同じではない
この2つはヘアオイルによく一緒に配合されますが、伝統的な位置づけは少し異なります。
アムラは、髪だけに限定されるものではなく、アーユルヴェーダの中で古くから幅広く用いられてきた果実です。
一方、ブリンガラージは、特に頭皮や髪との関わりが深いハーブとして知られてきました。
つまり、この2つを一緒に使うことは、単に「髪によいハーブを2種類入れる」ということではありません。
それぞれ異なる背景を持つハーブが、長い伝統の中でヘアケアに取り入れられてきた結果、現在のような組み合わせにもつながっています。
温かいオイルで、頭皮に触れるということ
ヴァータの季節にもうひとつ注目したいのが、オイルを使った頭皮マッサージです。
温かいオイルを頭皮になじませ、ゆっくりとマッサージする。
それは、複雑なことを何も加えない、とてもシンプルなケアです。
忙しい毎日の中で、髪を洗うためだけに頭皮に触れるのではなく、少し時間をかけて、自分の頭皮や髪の状態を感じる時間にもなります。
アーユルヴェーダでは、こうしたオイルを使ったセルフケアは、単に髪を整えるためだけのものではなく、身体を落ち着かせ、日々のリズムを整える習慣のひとつとしても考えられてきました。
乾燥や冷え、忙しさによって生活のリズムが乱れやすいヴァータの季節だからこそ、こうした「落ち着いて行うケア」に意味があります。
これは、特定の治療効果を主張するものではありません。
むしろ、季節の性質に合わせて、ケアの方法そのものを少し変えてみるというアーユルヴェーダの考え方です。
ここで、ひとつ大切なことがあります。
アーユルヴェーダの長い伝統の中では、これらのハーブは髪や頭皮をいたわるための植物として大切にされ、オイルやパウダーなど、さまざまな形で日々のケアに取り入れられてきました。
しかし、伝統的に使われてきたことと、現代医学において特定の効果が証明されていることは、同じではありません。
この違いを知っておくことも、アーユルヴェーダを丁寧に取り入れるうえで大切です。
もし抜け毛が長く続いている、急に髪の状態が変わった、頭皮にかゆみ・赤み・痛みなどがあるといった場合には、自己判断でハーブだけに頼らず、皮膚科医などの専門家に相談することをおすすめします。
アーユルヴェーダのハーブやオイルは、必要に応じて専門的なケアと並行して取り入れることはできます。
それらは、医療に取って代わるものではなく、日々のセルフケアの選択肢のひとつです。
今回は、あえて2つのハーブから
アーユルヴェーダには、髪や頭皮のために使われてきた植物が数多くあります。
今回、あえてアムラとブリンガラージの2つだけを取り上げたのは、すべてを一度に覚える必要はないからです。
まずは、よく耳にする2つのハーブについて、
どんな植物なのか。
どのように伝統的に使われてきたのか。
そして、季節ごとの活用法など。
それらを知るだけでも、アーユルヴェーダのヘアケアが少し違って見えてきます。
今後、ほかのハーブについても少しずつご紹介していく予定です。
一度にすべてを知るのではなく、ひとつずつ植物の背景を知っていく。
それもまた、アーユルヴェーダを暮らしの中で理解していく方法のひとつです。
まずは、アムラとブリンガラージ。
この2つは、アーユルヴェーダのヘアケアを知るための、古く、そして今も受け継がれている入口のひとつです。