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レークラージ・シンの物語 ─ 一度の出会いが生んだ、農村からの希望の連鎖

木々と広い空に囲まれた、静かな村の谷間に、レークラージという農夫が暮らしていました。
父グルダヤルの息子である彼は、口数は少ないものの、揺るぎない信念を持つ男でした。足元の大地と自然の力を信じ、その土地とのつながりはまるで自分の根のように深いものでした。
妻のラタ・デヴィは、かつて村のサルパンチ(村長)を務めたこともある芯の強い女性で、あらゆる困難の中で常に夫を支えてきました。

薬草に込めた想いと現実の壁

何年もの間、レークラージは土地に向き合い、ハーラッド、カンチナ、リタ(ソープナッツ)、カレーリーフ、アドゥサ、マルカンニ、ヴァサカといった薬草を育ててきました。
しかし、その献身にもかかわらず、生活は楽ではありません。収入は不安定で、市場も公平とは言えませんでした。
学業に励む息子アジェイ、そして結婚した娘ヴァンダナのために夢を描きながらも、その夢を支える手段が足りず、時にはこの道を続けられるのか自問する日もありました。

2014──運命の出会い

転機が訪れたのは2014年。
デリーでのカンファレンスセミナーに招かれたレークラージは、人生を大きく変える人物、尊敬すべきナラヤン・ダス・プラジャーパティ氏と出会います。

初めての会話から、何かが響き合いました。
ナラヤン・ダス氏は農業だけでなく、「目的」「尊厳」「可能性」について語りました。彼はレークラージの中に眠る可能性を見出し、レークラージは人生の道しるべとなる師を見つけたのです。

有機農業への第一歩

この出会いをきっかけにパートナーシップが始まり、ナラヤン・ダス氏の支援を受けてレークラージは有機農業に踏み出します。
より良い栽培方法や、公正なパートナーシップの大切さを学び、彼の育てる薬草は単なる作物から誇りと生計の源へと変わっていきました。収入は徐々に安定し、かつて苦労の象徴だった土地が、やがて豊かさをもたらす存在になっていきます。

2017年までに、レークラージはひとりではありませんでした。25人の農家仲間が彼と共に歩み始め、Cultivator’s の支援を受けながら農家のコミュニティは成長し続けました。
そして今では、その仲間は99人にまで増え、かつては孤立していた農家たちが、レークラージの歩みとナラヤン・ダス氏の導きに触発され、ひとつの道を歩んでいます。彼らは皆、変化と成長のムーブメントの一員となったのです。

変化は農業だけにとどまりませんでした。
レークラージはコミュニティへの貢献の重要性を感じ、Cultivator’s はそのビジョンを支えました。
Cultivator’s
は地域への物資配布支援を行い、学校にRO浄水クーラーを設置して安全な飲料水を提供し、植樹活動を通じてより緑豊かで健康的な環境づくりを推進しました。
こうした活動は地域の暮らしを改善するだけでなく、農業の枠を超えた持続可能な取り組みの力を示すものとなりました。

この支援のもと、レークラージの人生は大きく花開きました。
息子アジェイにはこれまで想像もしなかった未来への道が開かれ、娘ヴァンダナには忍耐と強さという価値を授けました。数々の困難を乗り越え、彼は自分の人生を変えただけでなく、地域社会全体をも支えてきたのです。

受け継がれる絆と夢

今日、レークラージは誇りを胸に歩んでいます。
彼の物語は、作物を育てることだけではなく、人を育て、希望を与え、そして遺産を築く物語です。
すべては2014年、ナラヤン・ダス・プラジャーパティ氏との一度の握手から始まりました。
その出会いが、彼自身を超えて多くの人々の人生に影響を与える変革の火を灯したのです。

一度の出会い、一つの絆、一つの夢——そしてレークラージの人生は、受け継がれるものへと変わりました。